『ジェーンとシャルロット』

娘シャルロット・ゲンズブールが母ジェーン・バーキンに「カメラを回すのは、あなたにずっと聞きたかったことを聞きやすくするための言い訳みたいなもの」と白状するところからこのドキュメンタリーは始まります。シャルロット初監督作。今年7月16日にこの世を去ったジェーン・バーキンの最後の作品でもあります。

母娘ともにフレンチカルチャーのアイコン。母はエルメスの定番バッグ「バーキン」の由来になった人。フォトジェニックなふたりの様々な表情・しぐさ・着こなしを堪能し、ふたりの人生の一片に触れるような贅沢を味わいます。特に興味深かったのは、シャルロットが父セルジュと暮らした家に母娘で訪れるシーン。40年の時を経ても当時のままという室内を埋め尽くす写真やアートや小物を一時停止して細部まで見たくなりました。

2013年にシャルロットの異父姉でジェーンの長女ケイトが自死。何年も苦しんだ母に対して、それまでも感じていた気まずさが大きくなることへの恐怖から、思い切って母と向き合う決心をしたことが本作を撮る動機だったとのことで、覚悟を持って母の本音を聞き出し自らも内心をさらけ出していることがわかり、それが本作の大きな魅力となっています。「私はあなたに気後れしていた。あなたに対しては間違ったことをしたくないと構える自分がいた」と言う母。「あなたのようになりたかった。あなたのことを知ると、いつもそこからもう一度新しく生き始めようと思った」と言う娘。凄い母娘関係です。自分たちは似ているところがある、それはふたりとも次女だからだったのね、という結論に行きつく会話も印象的でした。