『君は行く先を知らない』『熊は、いない』

『熊は、いない』と『君は行く先を知らない』。2本のイラン映画を続けて観ました。

2010年に“イラン国家の安全を脅かした罪”で政府から20年間映画制作を禁じられながら、今も撮り続けているジャファル・パナヒ監督の新作『熊は、いない』。とある村に滞在する映画監督が偶然ある一瞬をカメラに収めたことで、村がざわつき始める・・・監督役をパナヒ自身が演じイランが抱える問題をあぶり出す、ドキュメンタリーのようでドラマティックなサスペンス。不屈の映画監督の熟練の技を感じます。映画名が巧妙で、観終わったあと、熊とは何かについてずっと考えさせられます。

パナヒ監督の長男パナー・パナヒの初監督作品『君は行く先を知らない』は、トルコとの国境を目指す家族4人と犬の車の旅。やがて家族の何気ない会話から旅の目的が見えてきます。この映画に凝った手法はなく、ストレートに彼らの状況が胸に突き刺さります。ただ一心にずっと彼らを見つめ、旅の終わりが不安になり続けました。終盤の、父と息子が星空を眺めるシーンの美しさが印象的です。