今年のマイベスト級の映画!
降り注ぐ木漏れ日。そして習慣通り就寝前に本を読む男と、畳の部屋の窓の仄かな灯りが示す、同じ時間に東京の空の下にいる人々の存在。このチラシが映画の世界を見事に表現しています。
毎日決めた時刻に決めた行動を繰り返す…そういう暮らしを選んだ主人公。
でも、同じ日々を重ねることは「何も変わらない」とは全く違うし、
同様に、誰かと出会い同じ時間を共有すれば、その時間は濃くなって、それぞれの人生を変える。変わらないはずはない。
そんなことを顔の表情だけで見せてくれる役所広司。凄いです。
焼きそば酒場、お疲れちゃんの店主、銭湯のおじいさんなど笑えるシーンもあり、主人公が姪と過ごすひとときには心が温まります。カセットテープ、腕時計、「11の物語」、コンビニのサンドイッチなど、数多くの印象的なアイテムを思い出すのも楽しい。
ヴィム・ヴェンダース監督の35年前の映画『ベルリン・天使の詩』で、モノクロームの世界にいた天使が人間になり初めて知る色彩や、人と触れ合う感覚や、朝のコーヒーの味に感動するシーンを観て、日々が新鮮になったことを思い出しました。本作も観終わったあと、日々を丁寧に、暮らし重ねていきたいと、新鮮な気持ちになりました。