2020年に新聞の三面記事に掲載された実話に着想を得たという映画。母親から壮絶な虐待を受け続け、ドラッグに溺れた杏が、型破りな刑事と訳ありな週刊誌記者に出会い、更生の道を歩き始めますが、過酷な現実に直面します。
杏を演じる河合優実が凄くいい!
映画『由宇子の天秤』『サマーフィルムにのって』、テレビドラマ「17才の帝国」と、脇役ながら存在感のある彼女を続けて見て、俄然注目したのが2年前。そして今年。テレビドラマ「不適切にもほどがある!」のハマり役で波に乗った!
この映画のヒリヒリとした痛みは、河合優実が杏として確かに存在しているからこそ受ける感触。憤りをぶつける気迫にあふれた激しいシーンも印象的ですが、学校に通えるようになり、夢中で勉強している時に口元がほころぶ様子や、一字一字刻むように日記をつける時の指の動きなど、繊細な表現に心を鷲掴みにされます。
だから、杏に人生の希望を見出してもらいたいと必死に祈ってしまうし、杏のような少女ひとりすら救うことができない大人たちが本当に情けない!
杏を演じるにあたり「彼女と心の中でしっかりと手を繋いで、絶対に離さず、毎朝、今日もよろしく、いってきますとお祈りして撮影に向かっていました」というコメントを読んで、凄いなあと感動しました。最新作は、今年のカンヌ映画祭で国際批評家連盟賞した『ナミビアの砂漠』での主演。9月の公開が待ち遠しいです。
(2024年製作/日本映画/監督:入江悠 )