「音を立てたら即死」というキャッチコピーがインパクトを放った『クワイエット・プレイス』。音を立てるもの全てに襲いかかる“何か“が大群で現れ、世界が崩壊するなか、“沈黙”を守り生き抜こうとする者たちを描くサバイバル・ホラー。本作はシリーズ3作目にして1作目の前日譚です。
異常な状況のなか、身重の女性が出産し、家族を守り、今度は子供たちが家族を守ることで成長するのがシリーズ1作目と2作目。極限状態の中だからこそ描ける“母の強さ“にシビれました。このシリーズが好きなのは、恐怖の要素以上に感情に訴えてくる、エモーショナルなところなのです。
そして本作は、重い病気を抱えた女性が主人公。彼女の行動に意表を突かれます。それは、生き抜くためのサバイバルじゃない。救助の先に向かって全生存者が逃げるなか、彼女だけが逆の方向に、人とぶつかりながらも走り続けます。世界の終わりを知るDAY 1に、彼女はどこに向かおうとして、何をしようとするのか。それが終盤になってわかった時、目頭が熱くなりました。
偶然出会ったイギリス人青年との間に生まれた絆にもシビれます。そして、彼女の相棒の猫!猫は、鳴かず音も立てずに歩くので、平常心の象徴であり癒しとなって存在し続けます。ふと姿が見えなくなっても、彼女が必要とした時に必ず戻ってきて、傍にいてくれました。
(2024年製作/アメリカ映画/監督: マイケル・サルノスキ )