イギリス北部の炭坑町に生まれたビリー・エリオット。ストで荒れ果て、誰もが気力を消耗し、希望を持てない時代の中で、ビリーはバレエに夢中になります。
でも、もしビリーに「将来の夢は?」と聞いても、「プロのバレエダンサーです」と答えたりはしなかったはず。彼は、ただひたすら踊りたかった。踊っている時は躍ることだけに夢中になれるから。これが自分だって思えるから。
ビリーの踊りは、どんな型にもはまらない、内なる感情の自己表現です。難しいターンができるようになった嬉しさで、町中を軽やかに飛び跳ねるシーン。父への反発から足が勝手に動き出し、これが僕なんだと踊り出すシーン。オーディションで主役を得た当時13歳のジェイミー・ベルの、力強いダンスシーンには息を飲むほど圧倒されます。
ビリーの才能を見出すバレエの先生。生活が苦しい中でもビリーのためならと動き出す町の住人たち。そして、ビリーの将来のために必死になる家族。ビリーはみんなの希望になって、踊り続けるのです。映画のラストは、トップ・ダンサーのアダム・クーパーが25歳のビリー役で登場し、「バレエ表現の可能性に挑戦し続ける想いを一瞬に込めてほしい」という監督からのリクエストに見事に応えました。バレエって何て凄いんだろう。表現するってなんて自由なんだろう。
何度も観返していますが、23年ぶりに映画館で観れたことが本当に嬉しい、不朽の映画です。
(2000年/イギリス/監督:スティーヴン・ダルドリー)