22年前、撮影中に突然失踪した映画俳優。彼の消息を追って旅に出る元映画監督。そして、主役の失踪により公開されることのなかった1本の映画…。
「記憶」が大きなテーマの映画です。映画の中に登場する、記憶を失った男と記憶に苦しむ男。ふたりがそれぞれ記憶とどう向き合うことになるのかを見届けることになります。また、1本の映画が、関わった人ひとりひとりの記憶の中にどう存在し人生にどう影響するのかも考えさせられます。
そして、本作の監督ビクトル・エリセの過去作で大好きな『ミツバチのささやき』を観た時の、私自身の記憶も蘇りました。主人公の少女が見る空想の世界の場面がとても美しかったことや、その時の少女の澄んだ眼差しを、本作の中の印象的なワンシーンを観ながら鮮明に思い出しました。
映画の中で描かれる記憶と、私自身の映画の記憶に思いを巡らせた濃密な3時間でした。