ヒューマン・ポジション

青くて、物悲しいノルウェーの長い夏。主人公のアスタは、今日も日常のルーティンを静かにこなしながら過ごしている。一緒に暮らしているのは、彼女にいつも優しいガールフレンドのライヴ。そして、小さな黒猫。彼女は、なにげない日常や社会とのつながりから心の居場所を見いだしていく…。

ここ数年ノルウェー映画が面白いと思っていて、一昨年観て好きだった、ヒロインが魅力的な『私は最悪。』もノルウェー映画。

『私は最悪。』のユリヤは、人生におけるいくつもの選択に悩み、もがき、走り回ります。そして、完璧さを追い求めようとせず、今の自分を受け入れようというメッセージを、彼女を通して受け取る映画でした。そんなユリヤが「動」の魅力の持ち主だとしたら、『ヒューマン・ポジション』のアスタは「静」の魅力の持ち主。時折、目線の先の見慣れたはずの物事をじっと見つめるアスタの姿が印象的で、自分の気持ちが向く先を信じよう、それが自分らしくいるために大切なこと、と語りかけてくるように感じました。

シンプルにまとまった部屋での日常を、独特の構図で長回しにより映し出される画は、ひとコマひとコマがアートフォトのように美しい映画ですが、アスタの存在感がずっと残り続けたことが、この映画の一番好きなところでした。

(2021年/ノルウェー/製作・監督・脚本・編集:アンダース・エンブレム)