ドライブ・イン・マンハッタン

ニューヨーク、JFK空港からマンハッタンまで、真夜中のタクシーの車内で運転手と女性客が交わす会話。この映画は、ほぼ全編がその会話のシーン。
動かない人物の代わりに変化するのが窓から見える夜景で、殺風景な高速道路をしばらく走り、見えてくる煌々とした摩天楼。トンネルを抜けてマンハッタンに入ると車の旅もいよいよ終わりに近づく・・・そんな風景の変化と共に、ふたりの会話の内容も変化していくという構成が見事です。

波長が合ったふたり。女性客は、誰にも言えない恋愛の悩みや幼少期の出来事を打ち明け、運転手は背負い続けてきた人生の重みを解きほどくように自分のことを話し始める。演じるダコタ・ジョンソンとショーン・ペンの、顔の動きや声のトーン、ちょっとしたしぐさからも目が離せません。ショーン・ペンは久々の主演作。渋みと軽さを併せ持つ人物というハマり役で彼の演技を見られる幸せ!

昨日テレビで、ロサンゼルスでAIによる無人タクシーが本格的に運行している映像を見ました。クリスティ・ホール監督は本作のテーマを、人と人とのつながりの力、自分とは違う環境や考え方の人とただ話すという行為から生まれる発見と語っていますが、この映画の設定が、もうすぐに昔の時代のものになるのだと思い少し切ない気持ちになりました。

(2023年/アメリカ/監督・脚本:クリスティ・ホール)