時々、私は考える

『スター・ウォーズ』シリーズでレイを演じたデイジー・リドリー主演&プロデュース。人付き合いが苦手な主人公フランの人生が、ある出会いによって変わっていく過程を描きます。

自分の世界に閉じこもるフランには、共感するところがなかなか見つかりません。「これは本当に望んでいた自分?」と悩むヒロインなら、2年前に公開した映画『わたしは最悪。』の、もがき、選択を繰り返し、行動せずにはいられないユリアには、終始共感しっぱなしでした。

でも、フランの恋には夢中に!相手のロバートが素敵なんです。フランの個性を愛しみ、彼女と自分の考え方感じ方が違った場合でも、同じ場合でも、どちらも受け入れ楽しみます。ロバートの存在で、思いを寄せる人との距離が近づく嬉しさと戸惑い、変化する喜びを思い出させてくれる映画になりました。

時々、フランは死について考えます。生きていることを考えるために。

幻想的な映像で見せる死の心象風景と、ありふれた日常の景色とのコントラストが面白かったです。(2023年製作/アメリカ/監督:レイチェル・ランバート)

ロイヤルホテル

観終わった後の気持ちを上手く表現できません。どよん?ざわざわ?

旅先のさびれたパブで住み込みで働くことになった親友2人が経験する、客たちからの女性差別。エスカレートして結末へとなだれ込みます。長編デビュー作『アシスタント』で若い女性アシスタントの会社での1日を赤裸々に描いた キティ・グリーン監督は、今回も男性社会における女性の立場をあぶり出しました。

両作に共通するのは、生々しさ。ドキュメンタリー監督出身の彼女は、前作では主人公と同じ経験を持つ多くの女性社員たちを取材。今回は田舎のパブでよく過ごしている男性との共同脚本というスタイルを取ったそうです。

『ロイヤルホテル』に関していえば、女2人の男性社会からの解放のロードムービーとして『テルマ&ルイーズ』を思い出しましたが、本作には、ハーヴェイ・カイテル演じる刑事のような2人を理解しようとする男性は一切登場しません。ブラッド・ピットがクズ男を演じればたちまち愛すべき青年になりますが、本作のクズ男は、ただのクズ男。本作に生々しさが漂う理由が理解できます。

観た後の気持ちを上手く表現できませんが、観た人と無性に語りあいたくなる映画です。

(2023年製作/オーストラリア/監督・共同脚本:キティ・グリーン)