ザ・ルーム・ネクスト・ドア

不治の病に侵された親友マーサに、自分が死ぬとき隣の部屋にいてほしいと頼まれるイングリッド。「ドアを開けて寝るけれど、もしドアが閉まっていたら、私はもうこの世にはいない」。自らの手で人生の最期を迎えようとするマーサと、彼女に寄り添うイングリッドが、共に過ごす数日間の物語。

死に向かい合う映画ですが、悲愴感はありません。死を受け入れる覚悟が決まっているマーサは、身体は徐々に弱りながらも活力に溢れ凛々しく在り続けます。反対に死を恐れていたイングリッドも、マーサの生き方を尊重する覚悟をしてからは強い意志で彼女と共に生き抜きます。そして、ふたりがかつて同じ男を愛していたという設定が映画に情熱的な色彩を添えます。

マーサには疎遠になった娘がいて、娘が知りたがっていたのに話すことのできなかった物語…自分がどんな恋愛をしてあなたが生まれたのか…をイングリッドに打ち明けます。その物語が映画のラストに繋がっていくのです。人生とは、自分を形成しているものを知り、探し、向き合う旅なのかもしれない。この映画を観たあと、死についてではなく、人生について誰かと話したくなりました。

ふたりの女性の大胆さと繊細さを見事に演じたふたりの女優に感服です!

(2024年/スペイン・アメリカ/監督・脚本:ペドロ・アルモドバル)