2019年映画ベストテン

1.『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

2.『ラスト・ムービースター』

3.『荒野にて』

4.『ビール・ストリートの恋人たち』

5.『キューブリックに魅せられた男』

6.『あなたの名前を呼べたなら』

7.『THE GUILTY/ギルティ』

8.『ジョーカー』

9.『スパイダーマン:スパイダーバース』

10.『ファイティング・ファミリー』

2019年に観た映画といえば、まず、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』について語りたくなります。1994年、『パルプ・フィクション』で時代の寵児となったクエンティン・タランティーノ。そして、同じく90年代中盤に『セブン』と『タイタニック』でスターの座を確実にしたブラッド・ピットとレオナルド・ディカプリオ。3人のタッグに、もうとにかく感無量。ピットとディカプリオは、初共演で共に成熟した俳優としての最高の演技を披露、落ち目の役者とそのスタントマンのバディものとして大いに楽しませてくれます。そしてタランティーノは、シャロン・テート事件という時代の闇の象徴のような悲劇を、事実とは違う結末で描くという大胆な業でひとりのハリウッド女優の魂を救ってみせました。映画に対する愛が爆発する「これぞタランティーノ映画」です。

同作でディカプリオが演じた役のモデルであるバート・レイノルズが、かつて一世を風靡したアクション俳優を自虐を込めてチャーミングに演じ遺作となった『ラスト・ムービースター』。ファンたちの計らいで彼の晩年に光が差すという温かさが大好きでした。

少年が馬に寄り添いながら荒野を漂流する姿が忘れられない『荒野にて』。ここ数年観た映画の中で一番つらいラストシーンだった『ビール・ストリートの恋人たち』。レオン・ヴィターリという人物を知る面白さから始まり、気が付けば、映画製作の神髄まで教えてくれた魅力的なドキュメンタリー『キューブリックに魅せられた男』。今年最も心ときめいた恋愛映画『あなたの名前を呼べたなら』。

緊急ダイヤル担当の警官が、電話相手とのやりとりだけで誘拐事件に迫る『THE GUILTY/ギルティ』は、観る側にも電話の向こうの視覚情報を全く与えない斬新な作りが見事でした。最悪の事態を想像した自分の脳内映像で気持ちが悪くなったり、序盤のセリフをラストまで完璧に覚えていたりと、あらゆる感覚が研ぎ澄まされた88分間でした。

『ジョーカー』は、人から徹底的に疎まれ、社会から徹底的に疎外されたひとりの男の哀しみを体現したホアキン・フェニックスに圧倒され、目の前に映るすべてのシーンから一瞬たりとも目を逸らしてはいけないという思いに駆られた映画でした。一方、仲間同士の結束で、それぞれが自己の存在意義を見出し活躍する『スパイダーマン:スパイダーバース』は、アニメーションならではの方法でキャラクターたちの多様性を表現。今、観るべき、2本のアメコミ映画です。

WWEで活躍した女子レスラー ペイジの実話に基づいた『ファイティング・ファミリー』は、サクセス・ストーリーとしても勿論面白かったのですが、妹の実力と情熱を誰よりも信じた兄の姿に泣けました。ペイジを演じるフローレンス・ピューのことは、パク・チャヌクのTVドラマ監督デビュー作「リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ」を観て以来ずっと気になっていました。スパイの次に女子プロレスラーを熱演、そして若草物語の四女エイミー役でアカデミ―賞助演女優賞ノミネート、『ブラック・ウィドウ』も控えるという目覚ましい活躍を見せる、勝気な太い眉と低音ボイスが印象的な注目の女優です。