1991年ミニシアター公開作品都内興収ベストテン
【1】『シラノ・ド・ベルジュラック』/Bunkamuraル・シネマ
【2】『みんな元気』/シネスイッチ銀座
【3】『安心して老いるために』/岩波ホール
【4】『英国式庭園殺人事件』/シャンテ シネ
【5】『コルチャック先生』/岩波ホール
【6】『達磨はなぜ東へいったのか』/岩波ホール
【7】『エンジェル・アット・マイ・テーブル』/シャンテ シネ
【8】『ニュー・シネマ・パラダイス完全版』/シネスイッチ銀座
【9】『プロヴァンス物語 マルセルの夏』/Bunkamuraル・シネマ
最近、映画を薦め合う仲間うちで話題の『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』について、「これって、新しいタイプの「シラノ・ド・ベルジュラック」だよね」という会話をしていたばかりでしたので、今回の単館公開作品興収ベストテンを振り返る企画を1991年から始めたことに、嬉しい偶然を感じています。
演劇やミュージカルの映画化は、有名な戯曲に触れるきっかけになり、観ることで知的好奇心が満たされます。『シラノ・ド・ベルジュラック』をヒットさせた映画館ル・シネマは、日本で最初の複合文化施設であるBunkamuraという立地を活かしたラインナップが特徴で、1989年のグランドオープニング作品は、アーティストの人生を描く映画の魅力を教えてくれた『カミーユ・クローデル』。芸術に宿る激しい愛が強烈に胸に突き刺さり、この1本で、自分にとってのこの映画館の位置づけが決まりました。
『エンジェル・アット・マイ・テーブル』は、ニュージーランド出身の女性監督ジェーン・カンピオンの出世作。この3年後に『ピアノ・レッスン』の成功でハリウッドでも地位を確立することになります。カンピオンを初めて日本に紹介したフランス映画社は、1986年にジム・ジャームッシュ監督作品『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を、1989年にヴィム・ヴェンダース監督作品『ベルリン、天使の詩』を配給、作家性の強い監督たちを日本に紹介し当時のミニシアターブームの一翼を担いました。
『ニュー・シネマ・パラダイス完全版』が公開されたことは、鮮明に覚えています。完全版やディレクターズカット版が公開される先駆けだったのではないでしょうか?人生におけるかけがえのない日々を愛おしむノスタルジックな初公開版に比べ、この完全版は、人生の選択の結果手放してしまったものに気づく切なさが漂い、ひとつの映画の表と裏として存在しているように感じました。初公開版は、1989年シネスイッチ銀座で動員数約27万人、売上3億6900万円という興行成績を収めましたが、これは、単一映画館における興行成績として、2020年現在においても未だ破られていない記録です。
この年、日本初の衛星放送チャンネル=WOWOWが放送開始し、『ワイルド・アット・ハート』でカンヌ国際映画祭パルムドールを獲ったばかりの映画監督デイヴィッド・リンチによる海外ドラマ「ツイン・ピークス」が、開局の目玉としてスタート。“カルト”“作家性”という言葉が普及しました。