連載⑥ミニシアター系映画史1995年

1995年ミニシアター公開作品都内興収ベストテン

【1】『王妃マルゴ』/Bunkamuraル・シネマ

【2】『リアリティ・バイツ』/恵比寿ガーデンシネマ

【3】『午後の遺言状』/有楽町スバル座

【4】『カストラート』/シネマライズ

【5】『ショート・カッツ』/恵比寿ガーデンシネマ

【6】『Undo』『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』/テアトル新宿

【7】『恋する惑星』/銀座テアトル西友

【8】『エド・ウッド』/シャンテ シネ

【9】『イヴォンヌの香り』/シネスイッチ銀座

【10】『深い河』/シャンテ シネ

 

 前年10月8日にオープンした恵比寿ガーデンシネマの上映第1作目『ショート・カッツ』と、続いて上映した『リアリティ・バイツ』が共にロングランし、この年のランキングに入りました。恵比寿ガーデンシネマは、アメリカで公開されても興行的に成功しなかった、あるいはメジャー級の俳優が出演していないなど、様々な理由で埋もれている多くの傑作を発掘して紹介したいという理由から、オープン後5年間は英語圏の映画のみラインアップすると宣言した映画館でした。その後、5年目のアニバーサリー記念として英語圏以外の映画上映もスタート、その第1弾として、日本人にはまだ馴染みの薄かったポルトガル語圏の映画『セントラル・ステーション』をセレクトしたことに同館のこだわりが伝わりました。また、パンフレットに対するこだわりも強い映画館で、観客がその映画の世界観を抱えて持ち帰る楽しさを考え尽くしたパンフレットを販売しました。『17歳のカルテ』(00年日本公開)のポケットにしのばせる日記のようなサイズに包帯を巻いたもの、そして、『地球は女で回ってる』(98)のウディ・アレン作品らしいコレクション欲を満たしてくれる仕様のものが、恵比寿ガーデンシネマで購入した個人的二大お気に入りパンフレットです。

 この頃のミニシアター系映画には楽曲が印象的な存在となっているものが多いことを、この年の映画を振り返ると気づかされます。『リアリティ・バイツ』のリサ・ローブ&ナイン・ストーリーズ“Stay”、『恋する惑星』のフェイ・ウォン“夢中人”、『レオン』(95)のスティング“Shape of My Heart”、『プリシラ』(95)のグロリア・ゲイナー“恋のサバイバイル”。そして、『トレインスポッティング』(97)のアンダーワールド“Born Slippy Nuxx”、『ロミオ+ジュリエット』(97)のデズリー“Kissing You”、『シティ・オブ・エンジェル』(98)のアラニス・モリセット“Uninvited”、『ノッティングヒルの恋人』(99)のエルヴィス・コステロ“She”、『カラー・オブ・ハート』(99)のフィオナ・アップル“Across The Universe”。往年のナンバー、映画のために書き起こされたもの、名曲のカヴァーなどさまざまですが、いずれも、映画を彩るのではなく映画そのものと同化してしまう、そんな特別な存在の楽曲が、その映画をさらにドラマティックなものにしました。

 外資系大型CDショップが相次いで日本上陸した90年代。タワーレコード渋谷店が新装オープンしたのがこの年でした。どこのショップにも大抵サントラコーナーが設置されており、輸入盤・国内盤が混在しながら新作・旧作の映画音楽との出会いの場となっていました。クエンティン・タランティーノ監督の名を一躍轟かせた『パルプ・フィクション』(日本公開日は、冒頭でご紹介した恵比寿ガーデンシネマのオープニングと同じ日)は、70年代のポップスやソウルなどからの選曲が大いに注目され、サントラコーナーの花形として長く君臨し続けました。