1996年ミニシアター公開作品都内興収ベストテン
【1】『眠る男』/岩波ホール
【2】『イル・ポスティーノ』/シャンテ シネ
【3】『スモーク』/恵比寿ガーデンシネマ
【4】『天使の涙』/シネマライズ
【5】『フィオナの海』/岩波ホール
【6】『デッドマン』/シャンテ シネ
【7】『ユージュアル・サスペクツ』/銀座テアトル西友
【8】『PiCNiC』『FRIED DRAGON FISH』/シネセゾン渋谷
【9】『ユリシーズの瞳』/シャンテ シネ
【10】『幻の光』/シネ・アミューズ
岩波ホールでロングランした小栗康平監督作『眠る男』、前年に長編映画デビュー作『Love Letter』がヒットした岩井俊二監督の短編二本立て、是枝裕和監督の長編映画デビュー作『幻の光』。日本映画が複数ランクインした年でした。1974年に立ち上げミニシアターの先駆けとなった岩波ホールは、「自国のアイデンティティーを持ち、紛れもなくその国の視点で描いた作品」にこだわる映画館。作家主義をファッション化させる技に長け、企画上映や関連グッズ販売展開も常に注目されたシネセゾン渋谷。そして、「新しい監督や俳優にいち早く目をつけるポップで若々しいラインアップ」を掲げて前年の1995年にオープンしたシネ・アミューズ。映画館がそれぞれの目利きで作品を選んでいたからこそ、さまざまなタイプの日本映画が同時期に公開され、多くの観客を楽しませてくれました。日本映画のメッカ、テアトル新宿で北野武監督作『キッズ・リターン』がロングランヒットしたのも、この年でした。
「日本映画のニューパワー」…1996年は、そんな見出しと共に、さまざまなメディアで日本映画の勢いが紹介された年でした。6月22日、<新世代フィルムメーカーズナイト>と銘打ったイベントがテアトル新宿で開催。橋口亮輔監督作『渚のシンドバッド』、塚本晋也監督作『TOKYO FIST』、室賀厚監督作『SCORE』、是枝裕和監督作『幻の光』、以上4作品の上映とトークショーで構成されたこのオールナイト・イベントが満席御礼立ち見状態、その勢いが証明された日になりました。青山真治監督、岩井俊二監督、篠崎誠監督、古厩智之監督、矢口史靖監督らも含めた彼ら1960年代生まれの若手監督たちの、個性的で作家性の色濃い作品は、海外の映画祭で高く評価され重要な賞を受賞することも多く、逆輸入的に国内でも評価されるケースも注目されました。