『バービー』

冒頭、人形遊びの歴史と、バービーの登場で起きた革命を解説するプロローグ的な数分間がとんでもなく面白く、バービーを演じるマーゴット・ロビーの初登場シーンがとんでもなく美しくて、この映画にあっという間に夢中になりました。

監督は『レディ・バード』(大好き!)のグレタ・ガーウィグ。『レディ・バード』では悩める17歳の主人公が人生の新たな一歩を踏み出しますが、本作も、全てが完璧な世界のバービーが、作り物ではないリアルな世界への一歩を踏み出します。そして、母と娘の複雑だけど愛おしい関係を見事に描いているのも両作の共通点。本作終盤の娘の背中を押す母の気持ちを語るセリフが心に響きました。

バービーの実写化がファンタジー映画として仕上がるだけでなく、例えば作り物の世界“バービーランド“に物悲しさが漂うところにこの映画の深さを感じます。グレタ・ガーウィグがピーター・ウィアー監督に電話し、彼が手掛けた『トゥルーマン・ショー』について質問したという話に納得です。

エンディングに流れるのは、ビリー・アイリッシュが書き下ろした新曲。あっという間に世界的スターになった自分とバービーを重ね合わせて「私は何のために存在しているの?」「いつかは幸せになれるはず。そのために生まれてきたのだから」と歌っています。