レーシングシミュレーションゲームのチャンピオンは、本物のプロレーサーになれるのか?その問いに10代天才ゲームプレイヤーが答えを出すという実話ベースの映画。予測不能な命懸けの勝負に挑むレーサーたちの生身の格闘と、確実に勝ちが予測できるまで磨き上げるプレイヤーたちのスキルとセンス、どちらも優劣なく凄いという描かれ方が気持ちいい後味に繋がります。
監督は南アフリカヨハネスブルク出身のニール・ブロムカンプ。監督デビュー作『第9地区』の逃げ場のない隔離地帯の息苦しさは強烈でしたが、本作のレースシーンの没入感も、一体どうやって撮影しているのだろうと驚きの連続です。一方、他者を認め合うことの難しさもリアルに描かれていて、ゲームプレイヤーを見下すレーサーは最後まで態度が変わりません。この監督の作品は、一貫して他者との共存は果たして本当に可能なのかと皮肉めいて問いかけてくるように思います。
主人公を演じるアーチー・マデクウィがいい!勝負の世界には、それまでの空気が一瞬で変わるような追い風が吹く瞬間がありますが、この映画で“その瞬間”が来た時の、彼の表情がそれまでとは違ってぐっと凄みを増したシーンが目に焼き付きました。