映画の朝ごはん

おにぎり二個、おかず一品と沢庵。そんなシンプルなお弁当を提供する、ロケ弁として有名なお弁当屋さん「ポパイ」のドキュメンタリーです。


名だたる映画人たちが次々に登場しポパイのお弁当が特別な理由を証言するインタビューと、合間に映る調理場の様子。炊き立てごはんの幸せな湯気の映像にうっとりしていたら、ポパイにお弁当を発注した制作部の、ベテランさんと新人くんの仕事を追うパートに移り、そこから映画制作の実態や日本映画史にまで踏み込んでいきます。

ポパイのベテラン従業員さんの「ご飯で身体が満たされていれば作る映画は必ず良くなるのよ」という言葉が印象的です。「食事のシーンが記憶に残る映画に傑作が多い」というのが昔からの私の持論。ご飯と映画のいろいろな関係が見えてきました。

老舗のポパイは時代の変化に対応して商売を続けるけれど、働く従業員たちひとりひとりは今日も変わらずお弁当作りに人生を捧げている。映画の現場も同じことが言えます。ご飯も映画も、ますます好きになるドキュメンタリーでした。中身がギュッと詰まっていてお腹いっぱいになったのに、しばらくしたらもう一度、ワンシーンワンシーン噛みしめながら観たくなってきました。