夫の不審な転落死。殺人容疑者となった妻。第一発見者は視覚障がいのある11歳の息子。
妻、弁護士、検事、証人、そして夫が残していた家庭内の会話録音記録。それぞれの立場で主張する「真実」が乱立。夫はフランス人で妻はドイツ人、妻の方が成功者、息子を巡る意見の相違等この夫婦に関するあらゆる設定が、映画全体に漂う共通言語の不在を浮き彫りにします。
結構早い段階で自信持って結末を予測したのですが、この映画はそんな簡単じゃないはずと思い直したり、今、見せられている出来事が本当なのか誰かの推測なのかわからなくなったり、弁護士の「事実は重要じゃない」という発言に翻弄されたり。
でも、それら全部、もうどうでもいい! 今、見ているこれが「真実」でいい!
そう思ってしまう凄いクライマックスシーンが終盤に訪れました。この映画、私はかなり好きです。
息子ダニエル役ミロ・マシャド・グラネールの存在感に脱帽です!オーディションで抜擢された彼は、子供らしからぬ成熟の響きを持った声が決め手となり、監督が「この響きの説得力に賭けよう」と思ったそうです。もう、心の底から納得です!
そして、本作でカンヌ映画祭パルム・ドッグ賞(優秀な演技をした犬に贈られる賞)を授賞した愛犬役の犬の名演!映画の冒頭に登場するこの愛犬の行動が、ラストに見事に繋がっていて鳥肌が立ちました。