ABYSS アビス

渋谷のバーで働くケイは、死んだ兄の恋人ルミと出会い、行き場を探し始める。今を生きる20代のもがく姿をあぶり出す映画です。

ヒリヒリした感触が観終わった後も残ります。強い個性を持った映像&音楽!海の目に引きずり込まれた深海のアンリアルなシーンに「参った」と思うくらい惹かれたり、突如強調される呼吸音に「ここ好き」と共鳴したり。観ているあいだずっと気持ちが動き続けました。

そんなパワーを持つ映像&音楽を背景にして、この映画の人物たちは全員が、くっきりと輪郭を持って存在します。この映画の=須藤蓮監督の、誰も否定しないところが好きです。

でもそこに甘やかしはありません。それは共同脚本で渡辺あやさんが関わったことにより増した厳しい目線だと思います。その目線は、それでも誰も見捨てません。もう生きてたくない、だって失くすばっかりだ、と叫んだケイが、失わないものを見つけられたかもしれないという希望を映画のラストに感じました。

そして私の大好きだったセリフ。兄と幼少期を過ごした海辺にルミを初めて連れてきたケイが最初に発するセリフが、恋愛ってこういう気持ちになることだ!と初々しい気持ちで満たされました。