フォロウィング メメント

『フォロウィング』はクリストファー・ノーラン監督の長編デビュー作。現在・過去・未来を自在に操る時間演出と、モノクロ16ミリフィルム撮影で生まれる陰影の緊張感!ノーラン監督の原点、ここにあり!

主人公が状況把握に混乱していくに従って、時間が複雑に入り組んでいく。覚えていたはずの伏線が曖昧になっていく。『フォロウィング』は、記憶力を試される映画です。

そして、監督第二作目の『メメント』は、記憶を保てない状態を疑似体験する映画。

10分間しか記憶を保てなくなった主人公が、メモとポラロイドとタトゥーで自ら残していく「事実」を頼りに妻を殺した犯人を追うこの映画で、監督が取った編集技法は、時間の逆再生。そのテクニカルな面は勿論ですが、私はそれ以上にエモーショナルな面に俄然惹かれた映画でした。主人公は、「妻の復讐のために自分は生きている」と必死に呟く。それが彼にとっての生きるモチベーション。でも、犯人捜しは本当に可能なのか?復讐を果たしたとしても彼はそれを事実と受け入れるのか?彼の人生は、永遠に癒されることはない?

『フォロウィング』の、他人の生活を覗き見ることに囚われた男。『メメント』の、記憶し続けることに囚われた男。クリストファー・ノーランは、卓越した技術を持ち味にしながら、何かに囚われ、終わりのない苦しみを抱える人物を描き続けている監督なのではないかと、初期2作を改めて観て思いました。