システム・クラッシャー

困った。この映画のパワーを、自分が持っている引き出しの中にちゃんと収める自信がない。

システム・クラッシャーとは、大人の手に負えないほど制御不能で攻撃的な子供のこと。本作は、父親からのDVでトラウマを負った9歳の少女ベニーの、怒りと暴力が容赦なく爆発する日常を容赦なく描くドイツ映画です。

里親、グループホーム、特別支援学校、行く先々で問題を起こし追い出されてしまう。彼女のことを本気で考える大人も、自分の家族の方が大事、自分の精神状態の方が大事、それは仕方がない。ベニーは社会のどこにも居場所がなくなってしまうし、彼女自身もそのことはわかっている、でも、どうしようもない。

社会のシステムに折り合いをつけて生きている者の生半可な感情移入など許さない映画。でも、エンドロールに流れてきたニーナ・シモンの歌「Ain’t Got No, I Got Life」が素晴らしすぎて、希望を見つけずにはいられなくなり、気づいたら涙が止まらなくなっていました。