幕末の侍が現代の時代劇の撮影所にタイムスリップし、斬られ役俳優として生きていく『侍タイムスリッパ―』。
タイムスリップした侍は、すぐに状況を受け入れます。その都合良さすら愛おしい!自分が居るはずのない時代に迷い込んでしまったけれど、自分の存在を残せる仕事に出会い第二の人生に奮闘する主人公のカッコよさ!そしてそれが実際の斬られ役俳優や殺陣師のカッコよさに通じ、“侍魂”を後世に伝える時代劇の作り手たちへのリスペクトが詰まった映画になっていることに感動!
ものごとには終わりが来る。でも、それが今日じゃないのであれば、今は決着をつけなくてもいい、今を大事に生きればいい…タイムスリップものの真髄は、今という時間の価値に気づくことだなぁとしみじみと思いました。
時代劇を撮り始めたけれど資金難で諦めかけた監督に、脚本が面白いから何とかしてやりたいと救いの手を差し伸べたのが東映京都撮影所。10名たらずの自主映画のロケ隊が時代劇の本家、東映京都で撮影を敢行するという前代未聞の完成を遂げたという本作。東映京都で最初のカチンコが鳴った瞬間の監督たちの気持ちを考えると、胸がアツくなります。
(2023年/日本/監督:安田淳一)