身体が動物化していく奇病が発生。患者は“新生物”として分類され施設に隔離されていたが、事故が起こり彼らは野に放たれる。フランソワは、16歳の息子エミールを連れて野にいるはずの妻を探し続けるが、やがて、エミールの身体に変化が出始めていく…。
荒唐無稽な設定。人がさまざまな動物に変異するさまは気味悪くもある。それなのに、漂う美しさ、神々しさ、ぬくもりは何だろう。
エミール役のポール・キルシェが凄い!奇抜な映画が傑作になる要素として俳優の力は大きいと、改めて思います。例えば、『哀れなるものたち』で、肉体は大人なのに頭脳は赤ん坊という主人公ベラを演じて凄かったエマ・ストーンにあたるのが、『動物界』では、この、ポ―ル・キルシェ。だんだん動物に変異していく様子を身体の動きと表情の微妙な変化で表現します。
映画は、父と息子のドライブシーンから始まり、ドライブシーンで終わります。その時のふたりの会話が印象に残りました。最初のシーンで父が息子に言う「不従順こそが一番の勇気だ」というセリフは、この映画を最後まで引っ張り続けるテーマそのもの。そして、最後に父が息子にかける言葉!泣かされました。父子の愛を描いた映画です。
(2023年/フランス・ベルギー/監督:トマ・カイエ)