繕い合う・こと

亡き父の跡を継ぎ金継ぎ師の道を選んだが、わだかまりを抱えている兄と、
これといった目標もなく、父を継いだ兄に対して焦りや羨望から苛立ちを覚えている弟。
歪になっていた兄弟の関係が修復されていく様を、金継ぎをモチーフにして描かれていきます。

リズムや質感のようなものが何とも心地ちよく、自然に物語に引き込まれます。
でも、心地よいだけではない映画。ふたりの、ある年の瀬の数日間を観ているうちに、気づくと私自身と向き合っていて、毎日ちゃんと丁寧に過ごせている?この先のことは?なんてことを真剣に考えていました。
それはきっと、兄の日常のルーティンの描写や、変わらないと思っていたことが変化する瞬間、兄弟の距離感のリアルさ、そして風景も、ひとつひとつが丁寧に描かれているからだと思います。

次の暮れも、きっと変わらず兄弟ふたりで大掃除して、そして初詣に行って、その時はきっと変わらず弟の方が少し長くお参りするんだろうな。
・・・新しい年に観るのにぴったりの映画です。

壊れた部分を隠すのではなく、あえて金粉で目立たせるというデザインが金継ぎの特徴。「金継ぎは、傷を無かったことにはしない」という映画の中のセリフに心掴まれました。私が金継ぎに魅力を感じていた理由に気づかせてくれた映画にもなりました。

(2023年/日本/企画・監督・脚本・編集:長屋和彰)