港に灯がともる

阪神・淡路大震災の翌月に神戸に生まれた主人公・灯は、母からは自分を生むのがどれだけ大変だったかということを、父からは目の前で息を引き取った知人たちを助けられなかった悔いを、ずっと聞いて育ってきたことで何かを背負わされているような感覚に押しつぶされて生きている。設計事務所で働き始め、やりがいを見出した矢先、コロナ禍で灯が関わっていた仕事が中止になってしまう。

アフター震災世代の苦悩について、すごく考えさせられる映画です。
何も覚えていない。何も知らない。なのに何かを背負わされているような感覚…。

でも灯には、周りにとても素敵な大人たちがいます。設計士の青山さん、事務所先輩の桃生さん、丸五市場の平良さん。それぞれの言葉や行動が灯の心の糧になります。
私も、その子にとって今聞けてよかったということが言える大人になりたい。
もう何十年も大人をやってきているのに、切実に思いました。

富田望生の丁寧な演技がいい。監督は「カムカムエヴリバディ」「カーネーション」などの演出を手掛けた安達もじり。エンドロールの最後の最後まで、ヒロインの心に寄り添う映画です。

(2025年/日本/監督・脚本:安達もじり)