今年も残り数日となったタイミングで、またこんな素晴らしい映画を観ることができるなんて!終映後場内が明るくなるのが恥ずかしいくらい感動で泣き腫らしました。
私は小学校時代、先生にとても恵まれました。人生に大切なものを教えてくれた先生。自分も絶対に先生になるんだという思いを持ち続けていたのですが、私には無理だと諦めるきっかけの出来事も経験。なので、教師と生徒のドラマに関しては、理想ばかりを描く生優しい映画を観るとすっかり冷めてしまいます。
この映画、まずは、教師が生徒たちの眩しいほどの急激な成長ぶりに喜び、焦りもする描写がよいんです。そして、教師は型破りな授業で生徒たちを「導く」のではなく生徒たちの才能を「引き出す」、その過程の描写の説得力!生徒役の子役たちの神懸った演技に脱帽です。
アメリカとの国境近く、治安最悪な町の小学校で起こった実話の映画化。教師と、宇宙工学者になりたい女子生徒にはモデルが存在しますが、哲学の本に夢中になる女子生徒と、ニコという名の男子生徒は映画のための架空の人物。このふたりの存在が、貧困と犯罪から逃れられない環境故の、子供たちの前に立ちはだかる厳しい現実を浮き上がらせます。
生徒の父親が教師に言います。「子供に夢を見させないでくれ。自分の可能性に目覚めても、現実に戻った時に絶望するだけだ」。言い返せず苦しむ教師。でも、学びを知った子どもは本当に絶望するだけだろうか?
難しいその問いに、この映画は最後にちゃんと答えを出してくれました。あー、思い出すだけで泣けてきます。
(2023年/メキシコ/監督:クリストファー・ザラ)