オッペンハイマーが原爆の開発を進めたロスアラモスの研究所は現在博物館になっていて、入口に1枚の質問状が貼られていることを知りました。「科学者は自分が行った発明に対して、結果に責任があると思いますか?」。この映画の中で迷子にならないように、私は、この問いを考えながら観ることにしました。
印象的だったのが、オッペンハイマーがトルーマン大統領に謁見した際大統領にかけられた言葉。彼が生きた時代は、科学技術や科学者自身が政治に利用され、戦争に結びついてしまう時代だったことに改めて気付かされました。そして、責任を自覚している人間に責任があると言わないのは失礼だという思いに至ったシーンでした。
研究に情熱を注ぎ結果を追求する科学者としての真っ直ぐさ、でも一方で、原爆投下後の惨状を伝えるニュース映像に目を伏せてしまう絶望的な弱さ。この映画は、オッペンハイマーという人物像を、覚悟を持って描いていました。難役を演じきったキリアン・マーフィーに脱帽です。
そして本作、2回目はIMAXで観るべきと周囲から勧められています。IMAX撮影での顔の陰影がオッペンハイマーの複雑な感情を見事に表現しているのだそう。屈指の映画表現者クリストファー・ノーラン監督による人間ドラマでのIMAXの新機軸を確かめようと思います。