2000年単館公開作品都内興収ベストテン
【1】『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』/シネマライズ
【2】『ヴァージン・スーサイズ』/シネマライズ
【3】『オール・アバウト・マイ・マザー』/シネセゾン渋谷
【4】『ロッタちゃんはじめてのおつかい』/恵比寿ガーデンシネマ
【5】『アメリカン・ヒストリーX』/恵比寿ガーデンシネマ
【6】『橋の上の娘』/Bunkamuraル・シネマ
【7】『チューブ・テイルズ』/シネクイント
【8】『玻璃の城』/岩波ホール
【9】『シャンドライの恋』/シネスイッチ銀座
【10】『遠い空の向こうに』/シャンテ シネ
自由と愛に溢れた至福のキューバ音楽。人生の達人たちが生きることの素晴らしさを教えてくれるドキュメンタリー『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が幅広い年齢層を魅了した年でした。CDの売上30万枚というのは、ワールドミュージックというジャンルにおいて異例のことだったそうです。監督はニュー・ジャーマン・シネマの代表的存在ヴィム・ベンダース。『ベルリン・天使の詩』が88年に日本で公開されロングラン大ヒットしました。
少女の奔放さと儚さが鮮烈に描写されたソフィア・コッポラの長編監督デビュー作『ヴァージン・スーサイズ』。少女が曖昧な境界線を漂い続ける姿は、『17歳のカルテ』(2001年に跨っての公開のため興収発表年は翌年)でも強烈な印象として目に焼き付きました。『ボーイズ・ドント・クライ』もこの年に公開。彼女たちがありのままの自分でいるには、世の中はあまりにも不寛容であることを思い知らされました。
スペインの奇才ペドロ・アルモドバル『オール・アバウト・マイ・マザー』は、世界の映画賞を次々に受賞し、必見の傑作との話題が高まるなか満を持しての劇場公開でした。最愛の息子を失ったシングルマザーが、息子が残した父への想いを伝えるため夫を探すことに。妊娠した修道女、女しか愛せない大女優、ハートは本物の性転換美女。逞しく生きる女たちと出会いながら、彼女は、再生の旅を続けます。自分の人生と向き合っていく強さを教えてくれて、命が受け継がれていくことの素晴らしさを教えてくれる、そんな母のような温かさを持つ愛と人生の映画です。
1993年製作のスウェーデン映画『ロッタちゃん はじめてのおつかい』が多くの人に愛されたのは、ロッタちゃんの子供らしい可愛さは勿論ですが、ビジュアル戦略から始まり託児サービスの設定などに至るまで日本での劇場公開に関わった人々が作品を大切に育て大切に公開した結果だったと思います。ティーンエイジャーのみずみずしい感性が溢れる『ショー・ミー・ラヴ』、孤独な男に訪れた恋が夏の彩りと美しい白夜と共に描かれる『太陽の誘い』。スウェーデン映画が複数日本で公開された年でした。
エドワード・ノートンとエドワード・ファーロングが白人至上主義に傾倒する兄弟を演じ、アメリカ社会が抱え続ける差別意識・人種偏見を浮き彫りにする『アメリカン・ヒストリーX』。エドワード・ノートンがアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた同作が公開されたのもこの年。憎しみが生んだ悲劇のラストに、救いのない“暴力の連鎖”を思い知らされました。翌年の2001年、私たちは、アメリカ同時多発テロ事件の発生に衝撃を受けることになります。